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『武士道往来〜ロシアに描くサムライたちの面影〜』
(鈴川正久、元就出版社:2004,7,28)
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著者の鈴川さんは1915年生まれ、今年89歳。シベリア抑留を経て貿易会社に勤務。退職後は、ロシアの少年野球団や少年サッカー団、合唱団を日本に招き、日本の子供たちとの交流を通じて日本とロシアの民間交流に尽くしてこられた方。10年ほど前に取材を通じて知り合った。
今回の本の出版も、89歳というお年とは思えない精力的な活動で頭が下がる思い。
本には、シベリア抑留時代の話や、ロシアとの交流を図る中でいろいろな発見があったことなども記されているが、『武士道往来』というタイトルに関連してか、映画「ラスト・サムライ」を見ての感想も記されている。そのほか昨今の若者の電車内でのマナーなどについても言及している、鈴川さんの思いがちりばめられた一冊。
読んでいて思い出したのは「戦旅」(伊藤桂一作詞・高田三郎作曲)という合唱曲。これもタイトルからわかるとおり戦争を取り上げた作品で、その歌詞に、現在は不適切と思われる言葉使いがあるためか、あまり歌われることはないようなのだが、実は去年、私はこの曲を演奏する機会があった。
鈴川さんのこの本にも「北鮮」という言葉が出てくる。これも北朝鮮に対する差別的な表現だとして放送現場をはじめ、マスコミには登場しない言葉だが、鈴川さんが使う「北鮮」という言葉は、全然差別的に使われているようには感じられない。石原都知事の「三国人」発言とは、話しているステージというかレベルが違うように感じる。言葉というのは、語彙そのものが差別的な場合も、もちろんあるだろうが、文脈の中での解釈や発言者の背景などがいかに重要であるか、ということも感じさせてくれる。

★★★★半分
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