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『アメリカ以後〜取り残される日本』
(田中宇、光文社新書:2004,2,20)
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田中宇、という人、名前は「宇」と書いて「さかい」と読みます。1961年生まれで、私と同い年。繊維メーカー勤務を経て共同通信社入社。その後マイクロソフト社で「MSNジャーナル」を立ち上げたという人。現在は個人で国際ニュース解説記事のメールを配信しているそうです。この光文社新書から『イラク』という著書もあり、以前読んでその詳しい情報(取材力)と説得力ある文章に感心した覚えがあります。この本では、彼のスタンスはやや「左」なのだなという感じがしました。しかし、通り一遍のイラクを巡る報道ではなく、その背後にある「必然性」を、彼は追い求めている気がしました。
そして大きな結論は、既に繁栄の盛りを過ぎたアメリカが、ピークを取り戻そうとあがく動きこそが、21世紀の世界の平和を乱す一番の危険要因である、と主張しているように思いました。
アメリカ大統領選挙がある今年、ネオ・コンとされるラムズフェルド国防長官らと中道とされるパウエル国務長官たちのホワイトハウス内での戦いについてや、パウエル国務長官が「ブッシュ政権は単独覇権主義でも軍事偏重でもない」と、これまでのブッシュ発言を否定するような発言を今年(2004)年頭から始めていることなど、アメリカの政権内部の動きに対する観察や分析も鋭い。
そして、パレスチナで繰り返される自爆テロなどの攻撃、実はあれは、相手をわざと怒らせるイスラエルの占領戦略であるなど、思いも付かなかったことが記されていて、大変興味深い本です。

★★★★
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