ヘッダー Space
『ハイスクール1968』
(四方田犬彦、新潮社:2004、2、25)
トップページ
過去掲載分
ヘッダー

Space
四方田犬彦、と言うと、その変わったペンネームとまじめな(固い)文章内容とのアンバランスな印象から、読むのを避けていた作家(?批評家?)だ。世代的にもずいぶん上、というイメージもあったし。(実際は8歳年上。でももっと20歳ぐらい年上かと思っていた!赤瀬川原平ぐらいの感じで。)しかし以前、「ソウルの風景」(だったかな)を読んだ辛坊治郎氏が「おもしろい!」と絶賛していたので、読んでみようかな・・・という気も少し出てきた時に、新聞の書評で、この本の紹介があった。1953年生まれの四方田犬彦氏の高校時代、1968年という年の記憶を書いてある。
この本は一言で言うと「青春プレイバック」と言うか、現在の四方田氏にとっての「原点」を示すもの。「青春の清算」。今、書かないと記憶からも記録からも消えてしまう「あのころ」を文章で書き残すという目的とともに、書くことで当時を追体験し、現在の自分がなぜここにいるのかということを改めて確認する、そういう意味ではこれは、「一人の人間の歴史書」と言えるだろう。そして同時代の人間にとっても。
128ページと129ページの間に挟まれた、当時の「証拠物件」の写真が、退屈しがちな細かな描写に命を与えてくれていると思う。

★★★
Space

Copyright (C) YOMIURI TELECASTING CORPORATION. All rights reserved