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『死の壁』
(養老孟司、新潮選書:2004,4,15)
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ご存知、養老先生の最新刊。なんだかんだ言って、最近出た養老孟司の本は全部読んでいる気がする。この本は「バカの壁」と同じ新潮選書で「バカの壁」の「壁」をそのまま使った「語りおろし」で、いわゆる「柳の下の二匹目、三匹目のドジョウ」です。帯びには多きア黒い文字で「最終解答」と書いてある。すべてわかる、ということなのか?なんだか宗教的になってきた。
目次を見てみると、気になる項目がいくつか。第二章「不死の病」、第四章「死体の人称」、第五章「死体は仲間はずれ」、第六章「脳死と村八分」など。『死の壁』とタイトルにあるのだから、「死」についての文章がいっぱいなのはわかるが「どうして?」と。
改めて考えると、養老先生の本業は解剖学、つまり人間の死体を解剖するのは日常茶飯事、それが「仕事」なのだから。そういうある意味で特殊な仕事(?)を何十年もしてくると、当然、死体とは何か、死とは何かについて、ほかの普通の人よりも深く考えるのでしょうね。
「人間は必ず死ぬ、早いか遅いかの違いだけ」というのは「当たり前」なんだけど、みんな頭では判っていても、体では皮膚感覚では判っていない、自分は当分死なないつもりでいる。毎日のように死体を切り刻んできた養老先生でも、献体された知人(=恩師)の死体には、ナイフを向けられなかった、というのは当然であろう。また、日本人と外国人(宗教)によって「死体」に対する考え方が違うというのも、なるほどな、と思った。そういった違いは、ふだんは「当たり前」に思っているから、意外と根源的なところで気づかない差異なんだろうな。
これもゴールデンウィークの休みに読みました。

★★★
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