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『蛇にピアス』
(金原ひとみ、集英社、
2004,1,10)
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読みました、話題の芥川賞受賞作。先に『蹴りたい背中』読んでから。だって、舌にピアスして、それで舌の先が蛇みたいにチロチロするんでしょ、「スプリット・タン」っていうらしいけど。そんなの想像もしたくないし、なんでそんなことするかわからないし。ああ、ヤダヤダ。芥川賞を取っていなかったら、そして最年少の女性受賞者でなかttらら、しかもそれが2人いなかったら、読んでなかったでしょうね。本を読むときは気にいった表現やおやっ?と思ったところ、ページの端を折るのですが、この本で折ったのは、2か所だけ。「口ピ」(=口にするピアス)、「眉ピ」(=眉にするピアス)、「おそろ」(=お揃いのこと)というのが出てきたところが1か所、そして「舌ピ」(=舌にするピアス)という言葉が出てきたところだけ。そういう意味では『蹴りたい背中』の方が表現などで「お、これは」というのがあった。ただ、この小説は動きがある。『蹴りたい背中』を「静」とすると、この『蛇にピアス』は「動」だ。アナウンス部の後輩女性アナたちは、こぞって『蛇』を押す。たしかに『蛇』の方が映像的で、ちょっと膨らませればそのままTVドラマや映画が作れそう。『蹴りたい背中』は、マンガにはなっても、映画やTVドラマにはなりにくそう。
2月29日の読売新聞書評欄には『蛇』について、作家で慶応大学教授の荻野アンナ氏が書評を書いていた。それによると、
「こんなん、書いてみたいなあ」
読書委員会で某委員がつぶやいた。
「でも、孫が悲しむからなあ」
ニヤリと付け加え、全員がズッコケた。
とか、
「授賞式の夜のバー。即興でカクテル『蛇にピアス』を作ってもらった。真紅の液体はジンベース。甘そうでシワッと辛かった。」などと書いてあった。ハッキリ言って金原ひとみに好意的である。それに対して同じ2月29日の読売新聞で認知科学者の正高信男氏は、谷崎潤一郎の文壇デビュー作『刺青』と重ね合わせて『蛇にピアス』について論じている。そのまとめは、こうだ。
「(片山恭一『世界の中心で、愛を叫ぶ』と比べて)『蛇にピアス』の方は、もし芥川賞をとらなかったら、さほど部数を重ねなかったのではないか。何が書かれ散るかではなく、ブランドで売れていると言ってかまわない。」とかなり皮相的。やはり男はこういった小説を好まないのか?
また『週刊文春2月5日号』の「阿川佐和子のこの人に会いたい・520回」のゲストが金原ひとみ。この中での金原のしゃべりは、「すごい」の連発。
「すごい楽でしたね」「すごい主観で突っ走ってるのばかり」「すごいくらい感じで」「すごい初級者向け」「すごい怒って」「すごいヤだなああ」「すごい苦手な子どもだった」「すごいお金がなくて」「すごいショックで」「すごいおもしろくって」「すごい新鮮」などなど。今風やん。あと「とか」の連発とか。
「カラオケとか買い物行ったり」「村上龍さんとか山田詠美さん。」「ナンパとか・・・。」「制服とかダサいし」「ファミレスのウエイトレスとかやって」「自炊とか始めたり」「原因が私の浮気とかだから」。ほかにも、
阿川「カレシがいない状態ってあるんですか?」
金原「・・・はないですね」

この「・・・はないですね」は若者特有だ!
いいのか?芥川賞、やっても。イマドキのワカモノそのものという感じですね。阿川さんは気にいってるみたい。だから「蛇」は女性向、「背中」は男性向き、ということで。

★★
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