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『蹴りたい背中』
(綿矢りさ、河出書房新社、
2003,8,30)
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ご存知、最年少・芥川賞受賞作。芥川賞が決まってすぐの1月に買って読んだ。本当は第1作の「インストール」は本屋でチラッと立ち読みして「読むに値せず」と判断。だって字が少ないんだもん。その後も特に注目していなかったのだが。近年にない「話題作」なので、社会現象として一応読んでおこうと。
1ページ目から、純文学してるというか、どちらかというと青春の真っ只中の、誰からも本当の自分を理解してもらえない鬱屈とした気持ちがムンムン感じられて、「ああ、そういう時ってあったよな。」と共感できた。
また、「にな川」という同級生の男の子の苗字を「にな川」と書いて「蜷川」と書かないところなんかは、とってもうまい。タイトルと言い、うまい。比喩表現に独特の「感覚」が現れていてみずみずしい。
しかし、これを読んだアナウンス部の後輩の女性たちは「なんか、気持ち悪い」と言う人が多い。「これよりは、『蛇にピアス』の方がおもしろかった」と皆、口を揃えて言うのだ。
それに対して、数少ない私の知り合いでこの本を読んだ男性は、「『蛇にピアス』は読む気がしない。これはおもしろかった。なかなかこの子(綿矢りさ)はスゴイ」と言う。綿矢のほうがルックスもお嬢様風でかわいらしいので、男性受けするのだろうか?
それにしても文藝春秋はうまくやったものだ。芥川賞も直木賞も、いわば販売戦略の一つとして使われているのであろうが、この芥川賞受賞作2つを載せた『文藝春秋3月号』は異例の3回も増刷を行ったそうだ。たしかに、100万部売れた『蹴りたい背中』は河出書房新社、50万部売れた『蛇にピアス』は集英社と、他社が刊行している本。ほかの出版社から出している本に賞を与えるのは、なんかいいぞ、文藝春秋。
で、考えました。この出版不況下に、売れる本のタイトル。
『蹴りたいバカ蛇の背中にピアスの壁』。
これで「100万+50万+300万=450万部」は固い!!(笑)

★★★★
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