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スワッチのアニメ日記タイトル
■2010年09月02日  『今敏監督の訃報』



 先週、この日記にもアニ民で登場してもらった丸さん(マッドハウスの丸山正雄さん)と電話でお話しました。

 今監督の訃報についてです。

 ネットなどでいろんな情報を得るたびに、この監督とどうして1度でもきちんとお会いしてお話しておかなかったんだろう、という後悔の念にさいなまれます。ちょっと手を伸ばせば触れられただろうその才能に、もう2度とお会いすることは出来ません。

 僕はいい映画を観た直後についスタッフに電話してしまうクセがあります。「東京ゴッドファーザーズ」がそうでした。もちろん電話の相手は丸さんです。捨て子の赤ちゃんをめぐっての運命に翻弄されるホームレス3人組。あのシルクの糸を紡いでいくがごとくなめらかに連なっていく、偶然連鎖を受け取っていくあの気持ち良さはちょっと他で経験したことがありません。「また監督を紹介してくださいね」なんて軽口をきいてからもう約7年、自分の向上心の無さにあきれます。惰眠をむさぼっていた、というやつです。

 冒頭の電話、丸山さんのひと言ひと言が今監督の数ヶ月を伝えます。そしてご苦労をねぎらう言葉を持つことはできません。さらにネットで目にしたご本人の“最後の手紙”に心打たれます。人間と言うのはこんなにもちゃんとして旅立つことが出来るものなのでしょうか。本当に“アニ民”で紹介できるくらいお付き合いしたかった…。享年46歳。今敏監督のご冥福を心からお祈りいたします。

 残念なことに訃報が続きます。人形アニメーション作家・川本喜八郎さんです。僕は広島国際アニメーションフェスティバルで毎回お会いすることができました。大御所でありながら人懐っこい笑顔が素敵で、その飄々とした歩き方や話し方からも人柄が偲ばれる方でした。思えば今年はお見かけしなかったなあ。享年85歳。ご冥福を心からお祈りします。

 さて、この4月に僕もお世話になったアニマックス「創ったヒト」9月放送に神谷明さんが出演されると聞いて、収録スタジオにご挨拶してきました。ちょっとご無沙汰してた神谷さんとお話できて良かったのですが、なんとゲストは古川登志夫さんと千葉繁さん。時間の関係で収録すべてを見ることはできなかったけど、僕のことも話題にしてくれてました。(でも放送では編集カット候補でしょう…)。ケンコバさんや喜屋武さんにもご挨拶できて、なんだか番組のOB気分。スタッフのみなさんもありがとうございました。冒頭の4ショット写真は、控え室ですごい3人と一緒に撮らせてもらったもの。感激です。

『アニメ村のステキな住民』略してアニ民56人目。
 今週はプロダクションI.G代表取締役の石川光久さんです。
日本のアニメ界の地盤沈下が叫ばれる中、制作されるアニメーションの質・量ともに風を切って、業界の先頭を疾走する制作会社のひとつがプロダクションI.Gです。そのI.Gの前身〔アイジータツノコ〕という会社を設立して、それまでのタツノコプロから独立したのが1987年といいますからもう20年以上第一線を突っ走っていることになりますね。

 僕が石川さんと初めてお会いしたのは21世紀に入ってからですが、ちゃんとお食事しお話したのはもしかしたらゴールデン街でしたっけ。もうすでにカリスマめいた石川さんとの会話は、アニメ作りに対してのこちらの浅薄さが出ないようにすごく緊張してたのを覚えています。

 プロデューサーとしての石川さんは一つの企画のプレゼンに対して、例えば和菓子をひとつひとつ丁寧に包んでいくように分かりやすく説いていきます。その様は一種の職人技レベル。話をすればするほどこちらの理解が深まっていく感覚は、他のヒトからは受けることがないもの。そしてそれに加えて、石川さんの人となりが出ているかのような穏やかな論調。で、ここぞと言う時の熱の入れ方で見事に論点や意思が強調されていつのまにか寄り切られてる…。プロデューサーとしてはこうやってあまたの企画を通し、幾多の試練を乗り越えてこられたんだと思います。

 いつも仕事の話もするんですが、最近の僕との会話はお互いの置かれている環境や心構えみたいな、身近な大切なテーマが多いです。そんな会話からは計り知れない経営者としての石川さんのつらいところなのでしょうか、以前はあまりお酒を飲まなかったそうですが、なぜかワインをたしなむようになったのは。それともうれしいことに、ワイン好きな僕との付き合いもあってのことでしょうか。たまに参加するワイン会でもその独特な姿勢で楽しくかつ無限に会話を進めてるお姿を見て、実はニコニコしている僕がいたりします。

 プロダクションI.Gの経営者でありアニメプロデューサーの第一人者である石川さんですが、今や世界に誇る日本のアニメーションという文化の代表者でもあります。何度も開かれている石川さんの講演会は、今の危機を乗り越え次なる作品を生み出し新たな時代に乗り出していこうという示唆がてんこ盛り。ものつくりにこだわる熱い内容でありながら、あくまで穏やかに感じるソフトトークは天性のものなんですね。

 このほど会社を国分寺から三鷹に移され、これからも先頭で業界を牽引していくぞ、と主張するかのような新社屋を築かれました。「武蔵野カンプス」というステキなイタリアンの経営など新たな分野の事業にも進出したり、その経営者としての手腕は経済誌から取材されるほどですが、僕らの本分はアニメ制作です、と言い切る石川さん。新社屋祝いに僕が贈ったのは小型ワインセラーでしたが、熟成させなければいけないのはワインばかりじゃないですよね。どうかこれからもたくさんの面白いアニメ作品を熟成させるべく、業界のリーダーとして僕らをぐいぐい引っ張っていってくださいね。




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