第440回 番組審議会議事録

1.開催年月日
平成15年3月14日
2.開催場所 読売テレビ本社
3.委員の出席 委員総数 10名
出席委員数 8名
出席委員の氏名 熊谷信昭、秋山喜久、林 千代、野村明雄、
阪口祐康、佐古和枝、老川祥一、川島康生
欠席委員の氏名 金剛育子、馬淵かの子
会社側出席者 土井共成 (代表取締役会長) 以下14名
4.審議の概要 テーマ及び視聴合評対象番組
テーマ 「読売テレビ放送基準」の改正について、諮問・答申
視聴合評番組 情報番組「ザ・ワイド」
放送日時 月曜~金曜 午後1時57分~3時47分(110分)
放送エリア 全国ネット
 番組審議会では、読売テレビと日本テレビが共同制作している情報番組「ザ・ワイド」について意見を交換したほか、「読売テレビ放送基準」の一部改正について諮問(詳細別項)、原案どおり了承するとの答申を得た。
  「ザ・ワイド」については、委員からは「偏った意見や過剰な演出がなく、まじめな番組だという印象を受けた」「以前の、いわゆるワイドショー番組に比べると格段に良い番組になっている。コメンテーターの選び方など、局の品格が感じられた」「スタジオだけが盛り上がって内容に乏しい番組ではなく、淡々と伝えようという姿勢に好感を持った」など、出演者や表現手法を厳選して分かりやすく伝えようとする制作姿勢に共感する声が多く上がった。
 一方、「同じ映像が何度も繰り返し使用され、くどいと感じた」「安易に行政の責任を問う表現があったが、具体的な指摘はなく無責任なコメントに思えた」など、さらに表現に工夫するよう求める意見も出された。
 この後、2月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。

「読売テレビ放送基準は、番組審議会の答申を得て、以下のように改正されました。

第一章 人権(3)
プライバシーを侵すような
取り扱いはしない。
第一章 人権(3)
個人情報の取り扱いには十分注意し、
プライバシーを侵すような取り扱いはしない。

(全文は、読売テレビホームページをご参照ください。)

【議事録】
(社側)本日は、通常どおりの番組の視聴合評に加えて、放送基準の改正についてお諮りします。まずご審議いただきますのは、情報番組「ザ・ワイド」についてです。この番組は、平日の午後1時57分からおよそ2時間にわたって全国放送しております番組で、1993年4月にスタートして、間もなく丸10年を迎えます。いわゆる「ワイドショー」と言われる情報番組ですが、スタート時点から比べますと随分"進化"といいますか、制作側の意識も変化してきているようです。
本日、東京から担当プロデューサーが参っておりますので、番組のねらいや制作の状況について説明します。

(社側)この「ザ・ワイド」は、93年4月から始まり、今やワイドショーの中でも"最長寿番組"と言われるようになりました。当初始まったころから考えると、内容は相当変わってきたと私も思っています。
この番組は、読売テレビと日本テレビの共同制作番組ということですが、関西の局と関東の局が手を組んだ形で共同制作しているのは、この種のワイドショーの中ではたった一つだけです。読売テレビからは、私のほかに3人のディレクターが日本テレビのスタッフの中に入りまして、一緒に番組をつくっています。関西に関係する素材だけに私たちが関わっているということではなくて、一緒になって番組全体の制作に当たっています。
つまり、毎日、ここは中継しようとか、ここはこういう形で伝えていこうという形で、ディスカッションをしながら読売テレビと日本テレビが共同してつくっているという状況になっております。
番組の司会は草野仁という元NHKのアナウンサーと、森富美という日本テレビのアナウンサーが担当しており、この二人にレギュラーのコメンテーターの皆さんを交えながら、専門家が必要なテーマのときは特別ゲストを常に呼ぶ形で放送をしています。
ワイドショーといいますと、皆さんの中にあるイメージは、やはり芸能関係の話題やスキャンダルをメインにしている番組ということだと思うのですが、この番組では、視聴者の皆さんが何を見たいのかということをまず考えながら取り上げるテーマを選んでいます。ですから局面によって、政治であったり、経済であったり、はたまた事故・災害であったり、社会問題であったりと、もちろん芸能に関する話題も伝えるのですけれども、視聴者の皆さんのニーズに合ったものを伝えるように日々努力をしています。
確かに、ワイドショーというのは、例えば過熱集中取材であったり、被害者報道の行き過ぎであったり、いろいろな批判をたくさんいただいたのですけれども、私たちはこの番組を続ける中で、今一体何が視聴者に求められているのかということを、日々考えながら放送しています。現場では常に、取材の対象はこれで本当によかったのか、何を伝えるべきだったのか、放送後再度みんなで協議をしながら番組の制作に当たっています。一昨日も、イラク情勢に関して夜中の3時ぐらいまで議論をしまして、アメリカの状況、イギリスの状況、それから現地の状況を、どういうふうに伝えていったらいいのかというのを相当長時間に渡って検討しました。
この番組は、生の放送ですので、出来るだけ生放送というものを重視し、現場から出来るだけ生の情報をダイレクトにお茶の間に届けていくことを心がけています。

<VTR視聴>
(社側)ご覧いただいた3月3日の視聴率は、大阪、東京ともに10.0%でした。昨年1年間、252回の平均視聴率が大阪で9.4%、東京が8.7%と、いずれも横並びの他局の番組を大きく引き離しております。

視聴率の変遷はどんな感じですか。大体初めからこのような視聴率で来ていたのですか。

(社側)最初のころは3%、4%台だったのですが、統一教会の実態を伝えるキャンペーンを行い徐々に視聴率が上がってきました。それから、オウム真理教をめぐる一連の報道のときには18%ぐらいまで行きました。その後、だんだん下がってくる形にはなっているのですが、最近は、平均して10%から12~13%ぐらいの間を行ったり来たりという現状です。

時間帯では視聴率に変化はあるのですか。

(社側)午後2時台は13%、14%台ですが、3時台になりますと少し下がってきまして大体8%台で推移しています。

視聴率の関係ですが、取り上げるテーマやトピックスによって相当の違いが出るのですか。

(社側)それほど大きな差はないのですけれども、番組では速報を重視していますので、例えば、拉致被害者の問題など、ホットなニュースを扱うと、視聴率は上がります。先日の韓国の大邱市の地下鉄火災のときは、13%ぐらいありました。

このワイドショーは、一つはあらゆるテーマを扱うということと、もう一つは、複雑な背景について、避けないでわかりやすく伝えるというねらいを持っておられるのではないかと思います。普通のワイドショーだと、あらゆるテーマをわかりやすくということについては取り組んでいると思うのですけれども、この番組では、それをあえて複雑な背景についても避けることなく伝えることをねらいとしており、ちょっと深みを持ったことをやろうとしている意図は非常にいいと思います。とかくワイドショーは、薄っぺらになってしまうのですけれども、それに比べてこの番組は、取り上げるテーマや伝え方についても深みを持ってきているのではないかと思います。
きょう見せていただいた3月3日放送分の中で、「特ダネファイル」とか社会事象的なものは、あらゆるテーマをわかりやすく伝えていると思うのですけれども、難しいのは拉致問題とイラク問題です。こうしたテーマの複雑な背景をどこまで説明するのか、あまり突っ込んで説明してしまうとワイドショーの域を超えてしまうでしょうし、あまり薄っぺらな説明をしてしまうと、ほかのワイドショーとの差が出てきません。
拉致問題について、日本人は非常に深い関心を持っているのですけれども、テロとの関連で考えることも必要です。例えばアメリカでは、N・B・Cですか、ニュークリアとバイオとケミカルなどを武器とする、拉致を含めてのテロリズムに対して、どう戦っていくかということが今真剣に議論されている最中です。そういった中で、拉致問題も忘れないでくれと言いに行くことはいいことだと思いますけれども、全体の状況も見なければなりません。
今までのテロは、やや愉快犯的に世の中を騒がせ、自分たちの存在をアピールするためにやったのに対して、この間の9.11の同時多発テロは、まさに戦争としてのテロの始まりです。そういった中でアメリカがイラクを攻撃することについて、アメリカ国民の大多数が賛成している背景は、我々としては、よく理解しておかないといけないと思います。
そこまでワイドショーでやるかどうかは別として、そういった点を考えて報道していく必要があるのではないでしょうか。アメリカにしてみると、テロリストは宣戦布告なしに、いきなり襲ってきて、自国の4,000人とか5,000人という大量の人が1回のテロで殺されています。これからN・B・C、ニュークリア、バイオ、ケミカルのテロが始まると何万人、何十万人の人が一気に殺される可能性があることに対して、どう予防していくかということが、今アメリカで議論されている一番大きなポイントになってきていると思います。
核爆弾でも核弾頭につけて撃ってくるということはないと思いますけれども、船に乗せて持ってきて港で爆発させれば、何百万人が一気に死んでしまいます。あるいは、かつてイラクが使っていたようなバイオ、ケミカルの武器を使えば、何十万人、何百万人が一気に殺される可能性があります。そういう危険があるのであれば、先制攻撃をすべきではないかというのが、今のアメリカの意見だと思うのです。先制攻撃論は、今までの戦争論からいくと国際法違反だと思うのですけれども、テロに対する戦争の場合は、本当にそれが違反なのかどうかということについて、日本人も議論をしておかないといけないと思うのです。
それから北朝鮮問題についても、もちろん拉致というのは国家主権に対する侵害ですから、徹底的に向こうに抗議をする必要があると思います。けれども日本の国は、あけっ放しというか、今後、第2、第3の拉致被害が出てこないという保証がないくらい警備が甘いわけです。もちろん拉致問題の解決ということも必要だけれども、拉致されないような国づくり、あるいは今後、多数のテロリストが入ってきたときに、テロの発生をどう防ぐかということについての国家安全保障的な議論をきちっとしていく必要があると思うのです。
そこまでワイドショーでやるのは難しいと思いますけれども、そういった意識をどこかに持って制作に当たり、ものごとの背景には非常に奥の深いものがある、ということを日本人に意識させるような番組が必要になってくると思うのです。どうも日本人はうわべだけを追いかけて、「拉致はけしからん」あるいは「拉致された人たちを取り返さなきゃ人道上問題がある」という議論になります。これは確かにそのとおりだと思うのですけれども、日本人の財産と生命を守るためにはどうすればいいのだという議論が、どこにも行われていないというのが、ちょっと我々としましては不満なのです。
報道にたずさわる人たちが、その辺の意識を持ってこれから取材していき、順次そういった議論が国内に起こってくるように考えていただけるといいなと、思っています。

今のお話のようなシリアスなところまではなかなか期待しにくいと思うのですが、番組を全体としては、この種のニュースワイドショーの中では唯一と言っていいぐらい比較的良質な番組だと私は思いました。この審議会の視聴者からの声の報告で、時々、この「ザ・ワイド」についていろいろな意見が寄せられていることを知り、そういう番組なのかなと思っていたのですが、特段偏った意見もないし、過剰な演出もないし、割と淡々と伝えていて、まじめな番組だな、という印象を受けました。
ただ、いろいろなものが盛りだくさんになっているからなのでしょうが、強い印象があまり残っていません。ちょっと物足りない、という言い方は適切ではないのかもしれませんが、どこがメインだったのかなという感じがして、何となくさらっといろいろなものが流れていったという感じがするのです。その原因の一つは、毎日のことだから難しいとは思うのですが、取材不足、説明不足です。
例えば、ボラとカワウの話題もそうなのですが、私はこの日の番組しか見ていませんのでわかりませんが、あるいは、別な日に放送していたのかもしれませんが、いつごろから何でこの立会川というところに来たのかとか、その地域の特性とか、何かそういう説明が一言ずつでもあると、「ああ、そういうことなのかな」と納得し、そこから考えるヒントみたいなものが何か出てくると思うのです。しかし、今回はどこから来たかというところだけに絞られていて、この番組を見ただけでは全体状況の把握がちょっと難しかったように思います。

(社側)このテーマは、キャンペーンの形で以前から取り上げてきました。ボラは、いわゆる出世魚であるという基礎知識の説明から始まって、そのボラがどうして立会川という都会の川に上ってきたのだろうというところから、取材をスタートさせました。
そして、江戸時代には春の風物詩であるボラが上っていたこと、近くの商店街の方々が川をどうしたらきれいにできるだろうということをずっと考え、東京駅の地下から出た水を立会川に引き込み、それで初めて川がきれいになってボラが戻ってきたことなどを、実は何回か放送してきたのです。
そこに今度はカワウという、そのボラをねらう鳥が現れたというので、取材しました。その後、神田川にもボラが現れたということで、この後もずっと取材を続けていまして、随時トピックス的に、お伝えをしています。

ナレーションを聞いていて、ああ、これはきっと前にもやったから、そこで説明が済んでいるのだなとは思ったのです。というのは、我々新聞の場合にもよくそういうことがあるのですけれども、毎日毎日同じテーマで報道する場合に、新しい部分だけを伝えることに重点を置いて、この部分はもう書いたから、同じことを書いてもしようがないということで捨象していくわけです。
そうすると、伝えている方は、この情報はきのう書いてある、あるいは先週ここの分は載っている、ということを言いたいのですが、読んでいる方は全然そうは見ないわけです。スペースの関係で、どうしても避けられない面もあるのですが、そういうことがしばしばあって、そんなに多くの行数を要しなくても説明できるのであれば、多少の繰り返しも必要かなと考えています。新聞づくりに当たって同じようなことを考えていますもので、そこら辺を感じました。
それから、強風で家が倒れてしまったという項目ですが、あれも、通し柱がなかったのではないかという指摘を、建築家の方が写真を見て言っているだけで、実際にはどうだったのかとかいうことを、警察なり、あるいは家の持ち主なりに確認していません。どこが設計してどこがつくったのか、現場へ行って聞いてみればわかるのではないかと思うのです。その辺を調べて、一言言っていただく方が、伝える意味があるのではないかと思います。あのままだと、ただ、「あっ倒れちゃった」「こんなことがあるのね」という驚きの部分だけを映像で見せたというところで終わっている感じがします。
それから芸能の話題で、漫才の中川家というタレントが女の子を殴って云々という事件を紹介していましたが、これも、どういう状態だったのか、よく分かりませんでした。警察の調べを受けるということは、やはり単なるツッコミでコツッとやったという程度ではないと想像できるので、もうちょっと警察の調べの中身なども取材して、伝えていただくと「そうかな」と、納得できると思うのです。
坂本冬美が復帰する話題も、いろいろコメントされていましたけれども、本当はどうなのか、よくわからないのです。わからないものを、あまりきれいに説明をつけてしまうと、後でまるっきり格好がつかなくなってしまうということもあるので、説明し過ぎるのも難しいと思います。やはり、きちんと取材をした上でのコメントが欲しいな、という感じを受けました。
もうちょっと取材をして、情報を盛り込んでもらうと、見ていて参考にする度合いがもっと深まるのではないか、という感じを受けました。

私も、ワイドショーの中では、この「ザ・ワイド」にはいい印象を持ってきました。ほかの番組では、時々スタジオだけで盛り上がって、見ている方がついていけないようなことがありますが、この番組はそういうことがなくて淡々とやっているので、いい印象を持ってきました。
先ほど、ボラのお話がありましたが、このコーナーが長いなあと感じました。ここまでする意図は何なのだろうと思ってみていると、最後はカワウが悪者になってしまいました。カワウがボラを食べるのは、自然なことだろうと思うので、意図がよくわかりませんでした。
都会の川にボラが上っているということは知ってはいたのですけれど、何故上がってくるのかということが、今の説明でやっとわかりました。それまでは、何かの異常現象なのかなと思っていたのです。そうすると、その原因は何だろう、また人間が何かをして、こんなことになってしまったのかなと思っていたのです。だから、その辺のことが知りたいなと思いました。
その他、あれだけ多くのカワウがやってきて、周りの住民たちも大変だろうなと思いました。ただ、すごい、すごい、というだけではなくて、その辺の情報も伝えていただければ、よかったのではないかと思いました。
また、この番組についてということではなく、一般論なのですが、気になる話を知人から聞きました。拉致のニュースとかイラクのニュースとかで、特に私が聞いたのは拉致の関係なのですけれど、例えば、北朝鮮で飢えている子どもたちの映像が何十年も前の写真であったり、実は中国のここの景色だということが特定できるような写真もあり、中国で撮影されたものを北朝鮮のものとして流していることもある、ということです。
それが、本当なのかどうなのかわからないのですけれども、確か東京で、マスコミ相手に申し入れをした人たちがいるのを聞いて、私は、そういうこともひょっとしてあるのかなあと、不信感を持ちました。そのようなことがあるのかもしれない、と思いだしたら、バックに流れる写真まで、いちいち「これはどこなんだろう」と気になったりして、仮にどこで写したというコメントが書かれていても、そのコメントも本当かどうか、私たちには知るすべがないのです。番組では、そういう情報源をはっきりさせるという姿勢も、場合によっては必要だと思いました。

この番組は、2時間という時間を持っているという特徴をよく生かしていると思いました。つまり、これまでは1時間の枠が普通だったと思うのですけれども、2時間あるということで、例えば一つの情報について今までよりも、もう少し深く伝えていこうというのが、恐らくこの番組の意図だろうと思うのです。
先ほど視聴率の話を聞くと、大きなニュースがあるときに視聴率が上がるということです。そうした時は、恐らく他局も同じようにニュース物をやるとは思うのですけれども、その中で多くの人が「ザ・ワイド」を見るということは、視聴者から見て、この番組はニュース物について、ある程度深く掘り下げてくれるのだというものが定着してきているのだと思います。この辺の強みは、もっと伸ばしていけばいいのだろうというのが印象です。
もう一つ、これはちょっと教えていただきたいのですが、およそ2時間の番組をずっと見ていて、最初のころは特に気にならなかったのですが、やがて同じ映像が何度も何度も出てきまして、特にカワウがボラを食べている映像が頻繁に出てきて、あの辺から、ちょっと気持ち悪くなってきました。気持ち悪くなってきたというのは、ちょっとくどいなあと感じたということです。
私は、ここら辺は直してほしいなと思ったのですが、家内に聞きますと、「それは男の見る目ね」と、言われました。主婦がこの時間にテレビを見るのは、いろいろなことをしながら見るので、じっくり腰を据えて見ているわけではないのだ、と言われました。
ちょっとお聞かせいただきたいのですが、同じカットを何度も繰り返すのは、ある程度視聴者の生活サイクルなどを想定しながらやっておられるのでしょうか。

(社側)この時間帯は、今ご指摘のあったとおり、家事をやりながら主婦の皆さんがごらんになっています。同じカットの繰り返しというご指摘があったのですが、実を言うと、今は、あまり繰り返しはするなというふうに私たちも現場のスタッフに言っているのです。しかし、先ほどのボラのコーナーは17分ぐらいあったのですが、どうしても長尺のコーナーになると、あのシーンはどうだったのかなというところを忘れられる方もいらっしゃるので、何度か同じカットを入れています。じっくりご覧になると、「ちょっと多いんじゃないの」というご指摘は、そのとおりだと私も思います。
特に、今回のボラの項目に関しては、カワウが初めて現れたという情報を前週の金曜日にお伝えをしたのですけれども、速報で放送したために、どうしても食い足りないという結果になったのです。あの映像をもう少し見たい、という視聴者からのファクスもたくさんいただきまして、改めてじっくり伝えようという判断をして構成しました。この日は、商店街がボラのことでいろいろ盛り上がって、観光客も現れて物も売れているのだという、いわゆる町の活性化みたいなところにも視点を当てて伝えました。その中に、ボラを襲うカワウのシーンというのも入れようという判断で何度か入れたという状況です。ですから、常にどんな映像でも繰り返し入れるということではありません。

拝見しまして、玉石混淆というのはこの番組のことをいうのではないか、という気がいたしました。すばらしいところもありましたが、民放というのは政治家と同じで「国民の姿を映しているのだ」という方がおられますが、やはり国民はこういうニュースがご希望なのかなと、がっかりした気分になるものもありました。
いいところだけ取って見させていただくと、この番組は「また見ようか」という気がするわけなのですが、その間に散りばめている芸能の話題などは、どう見ても続けて見ようという気がいたしません。
しかし、冒頭に申上げましたように、そういうのを見たい方もおられるのだと思いますので、もう少し整理して、硬いものからだんだん軟らかいものに行くとか、そういう工夫があれば、この番組は最初の方だけ見たらいいとか、最後だけを見ようかというふうなこともできるのではないかと思いました。
ボラの話などは、ずっと見ている人にはどうか知りませんが、初めて見る者にとっては、サファリパークへ行って動物の生態を見させていただいたような感じもするぐらいで、一見の価値はあったと思います。ただ、先ほどもお話にあったように、何遍も何遍も同じ映像が出てくるのは、やはりちょっと辟易いたしました。
それから、政治的なことについて、どこまで突っ込むかという話ですが、普通のニュース番組よりも少し突っ込んだ話もするということであるならば、悪いのはアメリカであって、イラクはかわいそうだ、というふうな感じで表現している、今のマスメディア全体の報道の仕方は、何とかならないものかなという気がいたします。「安全保障理事会の決議なしに戦争を始めるのはけしからかん」という、一方的な論調です。
それはけしからんのかもしれませんけれども、ロシアのアフガン侵攻にしても、チェチェン紛争にしても皆そうであります。今回、ロシアが黙って「うん、うん」と言っているのもおかしいではないかと思いますし、ヒトラーが出てきたときにフランスが「ヒトラーと仲よくしよう、戦争をしないでおこう」と言って懐柔政策みたいなことばかりやっていたから、結局ドイツにやられてしまうということになったわけです。そういったことを、もうちょっと掘り下げて説明していただいた方がいいのではないかと思います。
それから、大変気になりましたのは、JCOの放射線漏れ事故の判決が出たという項目で、コメントの最後に「監督官庁の責任はないのか」と言ってぽっと投げ出してしまうような表現があったと思うのですが、私はそうではないと思うのです。あの事故は現場の人がむちゃくちゃなことをしたことが原因で、監督官庁が監督できるはずがないことです。日本の国民は何もかもお役所頼みで、何か起こると、役所がちゃんとしていないからと言いますが、こういう考え方が結局は役人をはびこらせ、そして経費を増やし、いらない規制をいっぱいつくらせる原因になっているのではないか、と思います。このコメントは、そっちの方向に向けるような表現ではないかと思って、大変残念に思いました。
監督官庁にも責任があるというのであれば、監督官庁がいけないということをはっきりおっしゃればいいので、あるのではなかろうかというのは、それこそ責任のない表現です。これは某民放の大変ひんしゅくを買った某キャスターの表現と一緒だと思います。こういう表現はやめていただきたいなあという気がいたしました。
それともう一つだけ小さなことですけれども申し上げます。家が強風で倒れた話で、このときには風速40メートルの強風が吹いていたと「予測される」とアナウンサーが言いました。これはシナリオに書いてあるのかどうか知りませんけれども、過去に起こったことを「予測する」などというのは、アナウンサーの教養を問われる表現だと思います。アナウンサーにちゃんと注意していただきたいと思います。よくある表現で「過半数以上に達した」というのもありますが、これなどは、言葉は生きているといっても、明らかに表現方法として間違えている言葉遣いですので、やはり注意していただきたいと思います。

ビデオで始めから終わりまで「ザ・ワイド」を見せていただいて、先ほど制作者の意識変化があったということを言われましたけれども、私が子どもを育てているころに見ていたワイドショーとは、まったく違い、格段に良質になっていると思いました。先ほど、「国民のレベルはこんなものかな」というお話がありましたが、以前に比べたら視聴者に対するおもねりというのか、視聴者を見下すようなつくり方とは全然違う形で、今がどのような時代かというものを端的に現すおもちゃ箱というか、残念ながら玉手箱ではないのですけれども、そのような印象を受けました。おもちゃ箱というぐらいに政治、経済、芸能ネタ、三面記事などいろいろなことが一遍にわかるようにつくってあり、視聴者を退屈させないようにしよう、という制作の意図はよくわかりました。
非常に良質であると感じたのは、例えば中川家の話を取り上げた場合に、街の声が入っていました。以前であれば、わざと茶髪でルーズソックスをはいているような人たちに聞いて、番組の質を下げるような取材をしていたと思うのですけれども、今回はごく普通の当たり前のカップルに聞いて、それに対する答え方もごく当たり前の「頑張ってほしい」というものでした。そういう細かいところに対する配慮が、つくる側の視聴者に対する考え方の変化であり、レベルアップというものかなと思いました。
先ほど、プロデューサーから「大衆のニーズをはからせてもらいながらやっている」ということを聞いたときに、これが局側の品格というか品性だと思いました。そういうものを保ちながら、露骨に視聴率を取ろうというようなところがあまりない局側の制作態度を見たときに、「あっ、やはりテレビも変わってきたんやな」と、思いました。コメンテーターの選び方とか、草野さんのコメントとか、横にいらっしゃるアナウンサーの余分なことを言わない態度に、レベルアップというものを感じて非常に好感を持ちました。
新聞であれば2、3行で済むことをテレビでは、どう見せていくか苦労するところだと思いますが、生の現場をダイレクトに見せるというやり方も、見ていて興味を引かれるというのか、「あっ、続けて見ていたいなあ」という気持ちを持たせていただきました。
ボラの話題を子どもたちといっしょに家族で見ていたときに、カワウ、カワウと出てきましたが、長良川のウは何だろうかと、ふっと疑問に思いました。ちょっと調べて、長良川のウはウミウだということがわかりましたけれども、番組でその辺まで伝えていただけたら、非常に興味の範囲も広がったのではないかと思いました。
けれども、一つ一つのことに関しての、ゲストコメンテーターの興味本位ではない真剣な言葉に対しては、一昔前と違い、局側の良質な番組をつくっていこうという姿勢が感じられて、非常に感心いたしました。今の時期は、いろいろな出来事が起こって多くの材料があると思うのですけれども、材料がなくなった場合にも、なおかつ、このレベルを落とさないで頑張ってほしいなと思いました。

私、実は貸していただいたビデオで初めてこの番組を見ました。この番組は、昼間の番組ですので、そこそこの高齢者の方々とか在宅主婦が主たる視聴者であろうと思うのです。その中で10%前後の視聴率をとっているということは大変立派だと思いますし、この番組が定着している証ではないかと、そういう感想を持ちました。
実際私自身も、このビデオを見せていただいて、離れられないというか、コマーシャルは少し飛ばしたところもあるのですけれども、引き込まれていったのです。一つ一つのテーマのワイドさ、それからテーマを掘り下げる掘り下げ方が、適切だったのではないかと思います。人によりまして内容に対する関心の濃淡は当然あると思うのですけれども、しかし、そうは言いながらすべてのテーマを見てしまった、というのが私自身の経験であります。
ニュースのコンテンツが必ずしも映像とともに用意できるとは限らず、この時間で、このテーマで、うまく割り振れるかどうかなど、番組を制作される上で大変なご苦労があると思うのです。ワイドショーといいますと、芸能ゴシップを扱った、昔、"一億総何とか化" と言われたような番組ですとか、どうも偽善的なヒューマニズムを標榜するような番組とか、そのような番組が多い中で、この番組はそれとは一線を画する非常にまじめな番組だと思うのです。先ほど委員の方のおっしゃったとおりだと思います。
結局、速報もののニュースと少し解説のついたニュースと、それから企画ものというものがあって、それぞれが映像を必要とするわけですから、テーマの選定と時間の配分とが大変なのではないかと思いますが、この程度のコンパクトさでまとめられているところが非常にいいのではないかと思います。
いわば直近の話題の百科全書的なものですから、私は楽しんで見せていただきました。長い寿命を保ってほしいと思います。そのためには、余分なコメントは要らないと思うのです。アナウンサーの方のアナウンスメントで内容的には十分わかると思います。
それから、これは少し別の視点ですが、東西のテレビ局のアライアンスで、この番組が制作されているということですが、私はほかに例を知らないのですけれども、すばらしいことではないかと思います。

この「ザ・ワイド」についてぜひ私も申し上げたいことがあるのですが、多くの方がご指摘になっていますが、特に政治の問題とか国際政治の話などになると、本当は裏があり、さらにその裏があります。首相や大統領もそれぞれ選挙を抱えていたり、いろいろな事情があって、その上で出てくる発言なのだということが、私自身も含めてそうかもしれませんが、一般の人には、あまり理解できてないわけですね。そういう人たちが視聴するわけなので、司会者とかコメンテーターの発言は非常に大きな影響力を持ち、それだけに責任も重大だと思うのです。
この番組ではなかったのですが、ほかのチャンネルのやはりこういうワイドショーで、時の話題としてイラク問題を取り上げていたのです。その番組では、コメンテーターでしょうね、女の人が「本当にフランスってご立派ですね」と言って、それでその番組が終わっているのです。そうすると、フランスはご立派、ブッシュはもってのほかという、そういう印象で終わるわけです。
これは生放送ですから、「ちょっと待て」とか言えないから大変難しいのでしょうけれども、司会者とかコメンテーターの人選、これはもう本当に基本的に重要だと思うのです。それがこの手の番組では一番問題だと私は思うのです。
それ以外は、いろいろな情報の発信源としてそれぞれ意味があると思うのですけれども、これだけはぜひ一言私は申し上げたいと思っていたことです。
それから、前に久米宏の番組が10時からやっていたのを2,3分前から始めて「禁じ手だ」と言われたのですが、この番組は放送開始時間が午後1時57分です。これは最初からこういう時間帯で放送しているのですか。

(社側)最初から、この方法です。

(社側)次に、放送基準の改正につきましてお諮りさせていただきます。読売テレビでは、放送法の第3条に従いまして、141の項目に及ぶ放送基準をつくっております。皆様には「読売テレビ放送基準」をまとめた、このような冊子をお配りしていますが、実は日本民間放送連盟加盟の放送局のほとんどは、民放連が定める放送基準を準用しておりまして、読売テレビも同様の対応をとっております。
このほど、その民放連の放送基準の一部が改正をされまして、読売テレビ放送基準もそれに準じて改正案をつくりました。これにつきまして皆様にお諮りいたしまして、ご答申を得た上で施行させていただきたいと思っております。審査室長から改正の内容について説明いたします。

(社側)今回の改正は、個人情報保護に関して、1カ所だけのものですが、冒頭の第1章の人権の項目でして、放送番組全般に影響する重要な改正ということが言えると思います。
「読売テレビ放送基準の一部改正について」という資料をごらん下さい。上の方の枠で囲んだ部分が読売テレビの放送基準で、左側が現在のものです。現在の条文が「プライバシーを侵すような取り扱いはしない」となっていますが、この条文の頭に「個人情報の取り扱いには十分注意し」という文言をつけ加えて、ごらんのような形にさせていただきたいというのが案でございます。
その下に大きな四角で囲んでいる方は、民放連の放送基準ですが、先月既に改正されました。全く同じ内容になるのですが、これに準じて改正したいというのが今回の提案でございます。民放連では、条文の内容を詳しく解説した「放送基準解説書」をつくっておりますが、この条文改正に関連しまして、一部書き変えられております。一番下の部分ですけれども、個人情報を放送に含む場合、事前に十分な注意が必要である、特にプライバシーにかかわる事項は本人の承諾を得ることを原則とし、また公共性、公益性などを踏まえた慎重な取り扱いが必要であるというような文言に変わっております。
従来の条文が、「承諾を得ることを原則としたい」とか、「慎重に取り扱うべき」という表現で、ややあいまいな形でしたが、それを具体的に何に注意しなければならないかを明記した形に変えたということです。
この改正の背景には言うまでもなく、個人情報保護法案などの動きがあるなど、個人情報保護に対して社会的な関心が非常に高まっているということや、プライバシー侵害を訴える裁判で、よほどの公共性、公益性が認められるもの以外はプライバシー保護の方を尊重するという流れが定着してきているということがあります。
本審議会に、この様な内容の改正案を諮問させていただきます。よろしくお願いいたします。

いかがでしょうか、何かご意見ございませんでしょうか。よろしゅうございますか。これは私どもの番組審議会が諮問を受けておりますので、この改正案でよければ、諮問のとおりに答申をいたしますが、よろしゅうございますか。
(全員異議なし)

この改正案で、私どもも結構だと思いますので、その旨答申申し上げます。

(社側)ありがとうございました。ご了承いただけたということで、本年の4月1日付で施行する方向で社内の手続をいたします。それから、改正の内容につきましては、自社検証番組の「声~あなたとよみうりテレビ」、読売新聞、番組審議会の議事録、読売テレビホームページ等で公表いたします。 それから、今も少しお話がございましたが、個人情報保護法案で少し動きが出てきたようですので、審査室長から説明させていただきます。 社側)ありがとうございました。ご了承いただけたということで、本年の4月1日付で施行する方向で社内の手続をいたします。
それから、改正の内容につきましては、自社検証番組の「声~あなたとよみうりテレビ」、読売新聞、番組審議会の議事録、読売テレビホームページ等で公表いたします。 それから、今も少しお話がございましたが、個人情報保護法案で少し動きが出てきたようですので、審査室長から説明させていただきます。

(社側)去年暮れに、個人情報保護法案はいったん廃案になりましたけれど、この度、それをもとに修正が施されまして、与党側が今国会で提案し、今度こそ成立を図りたいとの意向を示しています。
修正案は先週の金曜日に閣議決定されたことは、ご存じのとおりです。この案は、報道とか表現の自由に一定の配慮をにじませたものになっていると思うのですが、これに関して、民放連の氏家報道委員長がコメントを出しております。お手元に、お配りしましたので、ご一読願えればと思っております。
コメントでは、新しい修正法案に一定の評価を与えるとともに、日弁連などの批判意見にも理解を示して、これからも十分検討、注目していきたいとしています。
今後の流れですが、政府・与党側は5月の連休明けにも本格的な審議に入ることを目指しているようですけれども、報道や取材活動に主務大臣等が介入できる余地が残されているのではないかという批判も、まだまだ残っておりまして、野党側は対案の提案の準備をしているという状況でございます。この件につきましては時期を見まして、ポイントポイントで報告させていただきたいと考えております。

<視聴者センター部報告>
(社側)それでは、視聴者センターから先月寄せられた視聴者の声を報告いたします。2月の総数は6,510件。これは1月に比べて1,000件増えておりますが、ほとんどが問い合わせでございまして、意見、苦情は逆に少なくなっております。集中しての苦情もございませんでした。
ただ、「ザ!鉄腕!DASH!!」という番組で、また"いたずらメール"がはやりまして、これに関する問い合わせ、苦情が600件以上も殺到しました。この件に関しましては、2月23日のこの番組で注意を呼びかけたところ、ぴたりと止まりました。

最後に、スケジュールを確認させていただきます。次回は4月11日(金曜日)午前11時から、読売テレビ本社のこの場所で開催をいたします。ご出席いただきますようよろしくお願いいたします。本日は大変ありがとうございました。

  • 平成14年度読売テレビ番組審議会委員
  • 委員長    熊谷信昭   兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
  • 副委員長    馬淵かの子   兵庫県水泳連盟   顧問   元オリンピック日本代表
  • 副委員長    川島康生   国立循環器病研究センター   名誉総長
  • 委員    秋山喜久   関西電力株式会社  顧問
  • 委員    金剛育子   能楽「金剛流」宗家夫人
  • 委員    林  千代   脚本家
  • 委員    阪口祐康   弁護士
  • 委員    佐古和枝   関西外国語大学教授
  • 委員    北前雅人   大阪ガス株式会社   代表取締役副社長執行役員
  • 委員    谷  高志   読売新聞大阪本社   専務取締役編集担当