第436回 番組審議会議事録

1.開催年月日
平成14年10月11日
2.開催場所 読売テレビ本社
3.委員の出席 委員総数 10名
出席委員数 7名
出席委員の氏名 熊谷信昭、秋山喜久、金剛育子、馬淵かの子、
野村明雄、阪口祐康、佐古和枝
欠席委員の氏名 林 千代、老川祥一、川島康生
会社側出席者 土井共成 (代表取締役会長) 以下12名
4.審議の概要 テーマ及び視聴合評対象番組
視聴合評番組 ドラマ「私立探偵 濱マイク」 最終回「ビターズ エンド」
放送日時 9月9日(月)午後10時30分~11時24分 放送
放送エリア 全国ネット
番組審議会ではドラマ「私立探偵 濱マイク」について意見を交換した。
委員からは「いったい誰を対象に、何を訴えようとしているのか分からなかった」「説明が不足しており、ストーリーが良く分からなかった。つくり手側の自己満足に終わっているのではないか」「映画の手法を取り入れているようだが、家庭で見るテレビは、映画館で見る映画とは違う。その違いが、十分計算されていなかったのではないか」など、番組のねらいや表現に対して厳しい意見が相次いだ。
また、「暴力シーンがリアルで、しかも何度も殴るなど、しつこ過ぎるように思う」「友情や家族の大切さをテーマのひとつにしているようだが、若い人がこの番組を見た場合、かえって暴力や悪ぶることをかっこいいと受け取るのではないか」など、青少年に与える影響を危惧する声も上がった。
この後、9月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。

【議事録】
(社側)本日ご審議いただきますのはドラマ『私立探偵 濱マイク』です。読売テレビの月曜午後10時からの放送枠は、長年ドラマの枠として定着してきましたが、そうした中でマンネリに陥らないよう、さまざまな試みが続けられています。
今回の『私立探偵 濱マイク』も、いろいろな意味でチャレンジをいたしました。まず、企画、制作にあたりました編成部の藤門浩之チーフプロデューサーが番組の内容とともに、制作のシステムや狙いについて説明いたします。

(社側)このドラマ企画の原点となったのが、90年代の半ばにつくられた3本の映画のシリーズです。同名の『私立探偵 濱マイク』という映画が、95年、96年、97年に公開され、当時の単館系の映画としてはナンバーワンのヒットを記録しました。
その映画に主演した俳優、永瀬正敏は、現在、中堅のクラスでは日本の映画界を支えるスターの一人となっておりますけれども、その永瀬がテレビに10年ぶりに登場するというところが大きなセールスポイントの一つと考えて、このドラマを企画しました。
永瀬は、映画の当時は20代半ばでしたが、彼も年を重ねて30半ばになり、その年齢の重ね方も含めて、新しい『私立探偵 濱マイク』というキャラクターを21世紀に送り出そうということで、脇役のメンバーは全部、映画から一新をしました。
また、これはテレビとしては初めての試みだと思いますが、12回すべて違う監督で演出を行うという企画にしました。
それから最近では非常に珍しくなりましたけれども、全編、VTRではなくてフィルムで撮影をして放送しようというところも新しい試みの一つでございます。
そのようなものすべてを含んで、映画とテレビのコラボレーション、共同作業という企画で、ドラマ界に新風を巻き起こそうと考え、昨年の7月から準備を始めて、放送開始まで約1年をかけて12本の制作をしました。
きょうご覧いただきますのは、このドラマ12本の最終回にあたるエピソードです。マイクの幼なじみであるビーという男性が、マイクが探偵事務所を開設している横浜・黄金町に戻ってきたというところから始まるエピソードでして、最終回ということですので、マイクと妹の茜との関係をきちっと視聴者に伝えることも、ドラマの柱に据えて制作しました。

<VTR視聴>
(社側)今ご覧になっていただきましたのは、12本のシリーズのうちの最後の1本の「ビターズ エンド」というものをダイジェストにしたものでした。
このシリーズ12本の平均視聴率は6.9%と午後10時台の番組としては残念ながら十分な視聴者の支持を得ることはできませんでした。

ひとつ、疑問があるのですが、月曜日のこの時刻(午後10時~)に、どんな視聴者を対象と考えておられるのかなという点です。今ひとつは、私は素人でよく分からないのですが、VTRとフィルムに、奥行きなどの面で、本当にそれほど大きな違いがあるのだろうかという感じがしました。
全般的に見まして、学生の前衛劇風というのか、劇画的な感じです。シーンが、よく飛んで話がつながらないというのが実感です。説明不足と言いますか、さらに強く言えば独り善がり、自己満足的だと思いました。この時刻に家庭の中に流す、いわゆるドラマの面白さというか、ストーリー展開という点で、訴えたいところが分かりにくいのではないかと思います。
視聴者を意識するよりも、ほかの11人の監督さんに対する意識のほうがちょっと強くなっているのではないかなと、これは素人考えですが、そう感じました。
中身に入るつもりはありませんけれども、三つの点を指摘したいと思います。一つは、絶叫のシーン、暴力のシーンがすごく多く感じたのですけれども、当然規制の中でやっていることだと思いますけれども、何か違和感がありました。
もう一つは、遺骨の受け取りを拒否した妹のシーンは、これがどういうつながりでそうなるのかというのが、最終回に至るまでの11編の中に説明があったのかもしれませんけれども、よく分かりませんでした。
さらに言えば、せりふが長くて、よほど継続的に注視していないとスジが分からないのではないかと思いました。要するに、このドラマは私にはとてもついていけないと感じました。世代差を自覚したようなことでありますが、若者には受けるのかもしれませんけれども、私の家ならチャンネルを切り換えると思います。

私も、これを見るのに、ちょっと苦痛を感じました。怒鳴る場面が多く、また、俳優さんのせりふ回しが聞こえにくい上に、独り善がりのせりふが多くて、何を言っているのかなと耳を傾けてみると、大したせりふではなかったりしたので疲れました。
それと、暴力を振るう場面がありまして、もちろん俳優さんが上手だからだと思うのですけれども、本気でやっているような感じを受けました。私は、あまりしつこく叩きまくる、叩いたり叩かれたりで鼻血が出たりするのは、すごく嫌で、やはりこれは…。私なら、ほかのチャンネルに変えてしまいます。もう少し遅い時間に若い人が見るのだったらいいのだとは思いますが…。
午後10時ごろでしたら、ドラマを見たい人もいると思いますが、この番組はちょっと理解のしにくいシチュエーションが多過ぎるように思いました。まず、その俳優さんが何を言っているのか分からないのと、最終的に何が言いたくて、終わってしまったのか分かりませんでした。
あまりボロボロに言ってしまうと悪いのですけれども、私自身は、最後まで見るのはしんどいなと思いながら、全編を見て、今日はダイジェストのVTRを見たのですけれど、やはり分からないところは分かりませんでした。何回見てもおそらく分からないのではないかと思います。私の世代では、ちょっと付き合いにくいドラマだったと思います。

私も昨夜、送っていただいたビデオを主人や娘といっしょに見ましたが、家族は途中でやめてしまいました。私自身もストーリーの展開というか、何でこうなるのかという説明が全然なく、わけが分からないままに全部終わるので、番組の意図というか狙いがちょっと分かりませんでした。
それから、何か映画を見ているような雰囲気もありまして、テレビというよりは、映画館でじっくり見るためにつくったのかな、などといろいろ考えてみたりもしました。あの時間帯のテレビの探偵ものというと、例えば、田村正和さんの「古畑任三郎」シリーズとか、いろいろありますが、本当にストーリーの展開が面白いなど、魅力的なものがないと、見てもらえないのではないでしょうか。
テレビでは、こういう番組は多くの人に見てもらうことが難しいのではないかと思います。それから、いま、お話にありましたが、暴力のシーンが多いのは、いかがなものかと感じました。

私もストーリー展開が、分かりづらかったと思います。いろいろなことを詰め込み過ぎたために、かえって全体が見えにくくなっているのかなと思いました。
私は、この12回目以外にも、もう1回、別のときに見たのですが、そのときも、場面転換がものすごく早くて、見終わった後に、結局どんなストーリーだったのか分かりづらかったです。
ただ、映像という点で言いますと、確かに目新しいものでしたし、私の事務所の者に聞くと、「イマイチなものもあったけれども、面白いのも正直あった」という意見でした。
新しい試みをやるときには、いろいろご苦労もあるだろうし、失敗も多いかとも思うのですけれども、それを、次に生かすように頑張っていただきたい、ということを私の意見とさせていただきます。

私も大体皆さんと同じで、何とか最後まで頑張って見たのですが、普通にテレビを見るのでしたら、最初の1分ぐらいでチャンネルを変えてしまうかな、というような感じでした。
その理由のひとつは、ちょっと仰々しくて入っていけないということです。それに、せりふや、場面の設定も、わざとらしいところが目につきました。それからやはり暴力的なシーンです。ここまでする必要があるのか、と思いました。すぐに殴って、ボコボコにしてしまうので、見るのがつらかったところがありました。
ただ、ストーリーは良いと思います。少年院に行ったとか、いろいろなマイナスのレッテルを張られた若者たちが、それでも友情を大事にしたり、家族愛を大事にしたりしていることを伝えようとしているのだろうなと分かり、それ自体は、すごく良いと思います。
しかし、それではあの番組を、どういう人たちに見せたかったのかというと、やはりつくり方としては、若者向けになっていると思うのです。若者たちが、あれを見たときに何を感じるだろうかと想像すると、悪ぶったり、暴力的な部分をかっこいいと思ってしまうのではないでしょうか。そのような方向に行くのであれば、何か、ちょっと違うのではないのかと思います。
むしろ、もっとじっくりつくって、そういうマイナスのレッテルを貼られた子たちを色目で見てしまいがちな年配の人たちに「こういう若者たちも頑張って生きているんだよ」と訴えるようなつくり方もできたのではないのか、という気がしました。

この番組審議会には、ずいぶん以前から出席させていただいていますけれども、この番組は最も批評が難しい番組ではないかと思います。
視聴率が低かったということと、皆さん方の評判があまりよくないというのは、年代的な差もあるかと思うのですけれども、この番組概要のメモを読ませていただくと映画の『私立探偵 濱マイク』は非常に評判が良かったということです。それをテレビ化するときに、映画とテレビとの差が出てくるのではないでしょうか。
映画は、いろいろなお客さんと一緒に見ており、観客も出演者の一部みたいなものですから、その場の雰囲気が盛り上がってくると、刺激というか、興奮というか、感激があるのですが、テレビの場合は原則一人で見ているので、かなり冷静にストーリーを追いながら見ていくのではないのか、と思います。
そうすると、観客をどう説得するか。あるいは納得させ、感激してもらうための手法は、映画とテレビでは違うのではないのかと思います。その辺が当たっているのかどうか分かりませんけれども、番組を見せていただいて、次に何が出てくるのか、あるいは今何を言おうとしているのかが非常に分かりにくいという面があります。
映画館で見ていれば雰囲気である程度理解できるのかと思いますけれども、テレビの場合、自分一人で見ていると、それが理解しにくいということになってくるので、やはり次に何が出てきて、どう展開するのかが、ある程度、予測可能な範囲でないと、見ているほうはすぐにチャンネルを切り換えてしまうのではないかと思います。
最も上手なスピーチと言われているリンカーンの演説をみると、世界があって、アメリカがあって、この地があってというふうに、順々に展開していきます。ですから、次に何が出てくるのか、ある程度意識の中で予測しながらストーリーを追っかけていくことが出来ます。そうなると、自分の思っていることと一緒だと感激してくれるのです。また、「水戸黄門」が、何であんなに長く続くかというと、45分経ったら、必ず「これ」が出てくるのです。そういう意味では非常に見やすいのです。
一人で見ている場合、しかも、ふわっとした気持ちで見ている人に納得してもらおうと思えば、ストーリーがある程度、予測可能な範囲に入っていないと、見ている方はくたびれてしまうのではないかと思います。
映画としての人気と、テレビで皆さんに見てもらえる、視聴率を稼げるということは違うのではないでしょうか。視聴率を稼ぐだけじゃなくて芸術的であってもいいと思いますけれども、視聴率をある程度意識するのであれば、どうすれば皆さんに納得してもらえるかということを、よく検討しなければならないと思います。特に有名な映画をテレビ化するときには、その辺の違いを検討してからやっていただいたほうが成功するのではないかなと、当たっているかどうかは分かりませんけれども、そのように思いました。

先日、褒めるよりほかに言いようのないような優等生的な番組だけではなく、視聴率があまり良くなかった番組とか、ちょっと問題作と思われるようなものも見せていただいて、議論をしたほうがいいのではないか、というご意見がございました。私も例えば、非常にいい企画だと思ってつくってみたけれども、予想外に視聴率が悪く人気もなかったというような番組について、「一体これは、どう考えたらいいんだろう」というような意見を審議会にお求めになるのも、たまにはあってもいいのではないでしょうか、ということを申し上げて、早速この番組が出てきました。
この番組を取り上げることについてご案内をいただき、ビデオをお送りいただいた際、視聴率が最初は良かったものの、だんだん落ちていったという説明がありました。
それで、私も見せていただいたのですが、皆さんがおっしゃったように、第一に話のスジが分からないのです。ピンポンの練習場に何か変な男が出てきたときに、そこに探偵・濱マイクがどうしているのだろう、というあたりからスジが分からなくなってきて、そのあとずっと最後まで何の話か、率直に言って分からなかったですね。
また、何で、それほど興奮して怒鳴り合ったり、殴り合ったりしなければならないのかということが、見ていて分からないのです。先ほど「独り善がりでスジも分からない。何を言いたいのか分からん」というご意見等ございましたけれども、私も同じ感じを受けたのです。何がそんな天下の一大事みたいに、殴り合いや怒鳴り合いをしなければいけないのか分からなかったのです。先ほどお話がありましたが、映画で非常な人気を得たものがテレビになったときに、別のつくり方をしないと駄目なのかどうかということは、一つ問題であったと思うのです。
私は自分の感覚やセンスに自信がないものですから、実は何人かの私から見れば非常に若い人、テレビの好きな人に聞いてみたのです。そうしますと、共通していたのは『私立探偵 濱マイク』と同じ時間帯で、それまでやっていた番組が非常に面白かったというのです。『天国への階段』というドラマが非常に面白くて、ずっと見ていたという人が多いのです。それが面白かったから、引き続いて『私立探偵 濱マイク』も面白いだろうと思って最初は見たというのです。しかし、あんまり面白くなく、第二話以降をちょっと見ても、やはり面白くないので、結局2回目からはやめて、裏番組の『SMAP×SMAP』のほうへ変えたという意見が共通しているのです。
要は、面白くなかったという意見でした。私が見ても全然面白いと思えないのです。大変意欲的な企画意図を持っておつくりになったにしては、結果は、そういう印象をみんなが持ったみたいです。
では、どこが問題だったのかということですが、これは益々素人考えになるのですけれども、映画で非常な人気を博したものだったので、伝説になるドラマに挑戦しようと思われたということでした。しかし、テレビと映画では、根本からつくり方の違いを分析してやらないと、こういう結果になることがあるのかなと思ったのが1点です。
さらに素人考えで自信はないのですが、プロデューサーとか監督とか出演者のせいというよりは、結局は、脚本が不出来だったのではないかと思いました。
追加的に皆さんいかがですか。あまりスジが分からないし、面白くなかったというのが共通してのご意見だったように思うのですけれど…。

私の事務所の女性に聞きますと、彼女の友達が映画の「濱マイク」のファンで期待して1回目は見たということです。しかし、どうしても映画のイメージが残っていたみたいで、それと見比べてみて出来が良くなっていれば見るのですが、やはり、それよりも面白くなかったという印象を持ったようです。
映画であるとか、あるいは、人気漫画をドラマ化するというのは、それをプラスアルファするものにしていかないと、「映画や漫画のほうが面白いわ」という形で、すっと逃げていくようで、その辺が難しいところではないかと思いました。

なるほど、そういうことがあると思いますね。小説と、それを映画化したものとの間にも、そのような関係があって、私は『天平の甍』という小説を読んで非常に面白いと思っていたら、間もなく映画が出たのです。喜び勇んで映画を見に行って本当にガッカリしまた。
そういうふうに小説で感動して、それが映画になったら、裏切られたということもあるし、多分逆もあると思うのです。ですから、原作と映画の違い、小説を芝居とか映画にした場合の違いとか、映画とテレビの違いとかいうものを、よくよく調べないと、企画の意図が報われない結果になる可能性があるのですね。
何か反論というか、「お前たちは分かってない」というご意見でも結構ですが、ありませんか。

(社側)きょう、いただいたようなご指摘は、私の周りでも相当数同じようなご意見をいただいております。やはり映画とテレビのコラボレーションということを大命題に進めたのですが、おっしゃるとおり大変難しい作業です。ドラマの場合は大きく二つに分けますと、ストーリー型のドラマと、それからキャラクター・シチュエーション型のドラマというふうに分けられると思うのですが、この5年ぐらいは、どちらかというとストーリー型が、トレンドで言いますと、ウエートが高くなっています。
簡単に言いますと、ストーリー型というのは、例えばラブストーリーですと、二人が出会ってから、好き合って、また何かいろんな困難があって、最終的に結ばれるのか、結ばれないのかという、そういった大きなスジをワンクールの連続ドラマで十話とか十二話かけて描いていくというドラマです。
この「濱マイク」は、そうではなくて一つの舞台といいますか、設定をつくって、その設定に基づいたキャラクターたちが、毎回々々動きまわるということで、一話のストーリーをつくっていくという形のドラマです。今は、どちらかというと、こういう型のドラマは主流ではないのですが、間隙を縫うといいますか、逆転の発想でやってみよう、一つ映画としてモデルがありますから、これを今ふうに置き換えたシチュエーションをつくれば、それで毎回のストーリーをつくっていけるのではないかと考え、企画を始めました。
そのストーリーを紡いでいくのは、いろいろな業界で活躍中の12人のクリエーターで、出演者はこうですよ、設定はこうですよ、ということを我々から提示をしまして、ストーリーをつくっていただくという形でドラマの制作を進めました。
ただ、12人の監督はそれぞれ有能な方で、当然ながら個性も豊かでして、自分のアイデアというものに対して、ものすごくこだわりがあります。我々が提示したキャラクターや設定を、生かしきれないといいますか、それよりも自分の興味のある部分や、自分が関心のあるテーマや、魅力的なゲストのキャラクターなどにウエートを置いてストーリーをつくっていってしまいました。
言い訳になりますけれど、それに対して我々プロデュースサイドは、きちっと向き合って時間をかけてドラマをつくり上げることが、できなかったというところが、様々な批判を受ける大きな要因かと思っています。
きょうご覧いただいたのは最終回ですので、それまでの回に前提になる情報、この人は、こういう性格のこんな人、この町は、こういう町というのが、ある程度インプットされてないと、分かり難かったかもしれません。おっしゃるとおり、「何で卓球屋さんに探偵がいるんだ」というところから疑問が沸いてしまうと、恐らくドラマの内容に入って行けないと思います。
そういったところを丁寧に説明していってつくっていかないといけないのですが、ちょっと力不足というところは正直あったかと思います。ただ、今のテレビのドラマは、説明過剰なものが非常に多くて、特に連続ものの第一話は、時間も拡大されたり、特別なゲストが入ったりして、そこに説明を過剰にするがあまり、ストーリーの展開が進まないといったところもあるようです。
それを、どう考えるかということなのでしょうが、テレビが不特定多数に対して発信している以上、分かりやすい説明というのは、やはり必要だ、というのが、このドラマをやってみて改めて分かったという次第です。説明とストーリーの展開、面白い展開を両立させないと、いい成果は生まれないなと思いました。
映画の場合は、どちらかというと、説明よりは省略というほうが勝っているメディアだと思いました。それは、監督と話をしたり、脚本家と話をして改めて感じました。説明することを拒否するところから、始めるようなところがありました。
まず、我々は「分かるように説明をして下さい」と要求し、彼らとのぶつかり合いから始めなければならない、というのが、今回のコラボレーションで改めて分かったということであります。

映画を見に来ている人は一生懸命見ているから、あまり説明しなくても、むしろ想像をかき立てるほうがいい映画だと思っていますが、テレビを見ている人は、何か食べながら、横を向いたりしているのですね。そっくり返って見ているから、分かりやすくつくるという必要があるのではないかと思います。将来、ブロードバンドの時代になったときは逆になるかもしれません。
ということで媒体によって、見る人の態度を、ある程度意識しないと、うまくいかないのかもしれません。一生懸命見てもらうテレビが出てくればいいのかもしれませんが、テレビを見るときは、あまり一生懸命見ないですね。

(社側)結果は良くなかったのですけれども、このドラマを企画した際には、今のトレンディドラマですとか、いわゆる普通のドラマ、ちょっと出来が悪いのを「学芸会風ドラマ」と称するのですけれども、そうしたものとは、ちょっと違ったものをつくりたいという、一つ大きな発想がありました。
我々は1年かけていろいろ議論をいたしました。その中で、テレビを見ない若い映画ファン、それから音楽ファンと称する層、テレビを見ないで全部ビデオ屋さんへ行ってビデオで見てしまうレンタルビデオファン、こういった若い人たちを一度テレビに取り込めないか、と考えました。しかし、その結果を数字で見ますと、そういった人たちは見てくれなかったのではないかな、という気がいたします。

6.9%の視聴率と言われましたけど、見られた方は、かなり異質な方ですか、それとも普通の方ですか。

(社側)第一話の視聴率は期待感もあって、全国的に10数%を記録しているのです。しかし、第二話から1桁に転落しているのです。期待感をもってみられた第一話と、次との差がこれだけはっきり出た例はこれまでなかったのですけれども、その後は下がった視聴率のまま安定してしまいました。ですから、特定のコアな層は最後まで見てくれて、出入りがほとんどなかったのではないか、と視聴率を分析しております。

ありがとうございました。それでは『人権擁護法案』とか、『個人情報保護法案』についての報告があるということなのでお願いします。

(社側)ご存じかと思いますが、来週18日の金曜日から臨時国会がはじまることになっておりまして、この国会の中で政府は、前の国会で継続審議となっておりました『個人情報保護法案』と『人権擁護法案』について修正案を出してきて、成立をはかりたい構えだというふうに新聞等でも伝えられております。
ただ一方では、これもよくご存じのように株の下落など深刻な経済問題とか、北朝鮮の問題を抱えておりまして、政治日程的に今回の臨時国会では、いわゆるメディア規制法案を諮るのは無理という見方も、かなり強まっているというのが現状であります。それで、この機会に前の国会で継続審議となって以降の法案の動向について簡単に報告させていただきます。
前回の通常国会の後、当初出された自民党案では駄目だということで、与党の公明党が中心となって修正案を検討しまして、新聞協会、民放連、雑誌協会などに非公式に、「こんな感じでどうだろう」というような打診が断続的にあったと聞いております。修正のポイントとして伝わってきておりますのは、例えば、個人情報保護法案ですと、表現の自由に配慮義務を盛り込むようにするとか、基本原則からメディアを外すとかいうようなことです。人権擁護法案ではメディア規制部分を、しばらく、大体5年間と聞いておりますが、凍結して、この間、メディア側の自主的な取り組みが進むのかどうかを見守り、その結果を見て、また考えようというような案が浮かび上がっているようです。
また、雑誌協会には「フリーランスも規制から除外する」という内容を、法案には書き込まないけれども、国会で質問してくれたら、そう答えるからというような打診があった、とも伝わっております。
いずれにしましても、この修正案は手直し程度と言われております。例えば、人権擁護法案の人権委員会を、法務省の外局とするというような法案の骨格は全く変わっていないということです。私も参加しましたけども、先週、長野で開かれましたマスコミ倫理懇談会の全国大会では、改めてメディア規制の動きには強く反対するということを申し合わせました。マスコミ倫理懇談会というのは、マスコミ倫理の向上と表現の自由の確保などを目的に、昭和30年代に発足した新聞、放送、出版、映画、広告、レコードなど、いわゆるマスコミ関係の200社以上が会員登録している組織です。
もちろん、メディア規制と報道の改善というのは、表裏の関係でもありますので、同時に、その場でもマスコミサイドの自律、自浄の強化とか、記者研修の強化とか、そういうことも併せて申し合わせております。
話は戻りますが、民放連では報道規制が含まれている限りは、法案成立は認められない、という考えは変わっておりません。ただ、今言われているような修正案が出てくれば、我々としても真剣に対応を検討しなければいけない事態になると、考えております。
最初に申し上げましたように、修正案については与党の間でも、まだ十分に擦り合わせができていないという情報もありますし、また、日程的な面も含めて考えますと、来週から始まる臨時国会では審議されないことになる可能性が高いとみられており、早くても本格的に審議に入るのは、次の通常国会以降になるのではないかという見方が強まっています。

<視聴者センター部報告>
(社側)続きまして、9月に視聴者センターに届いた主な「声」を報告します。9月の視聴者対応件数は8,006件と今年の3月以来6か月ぶりに8,000の大台に乗りました。先月に続きまして問い合わせが6,500件近くと非常に多かったのと、9月17日の日朝首脳会談についてのご意見・苦情が9月だけでおよそ100件と多かったことが、先月の特徴となっています。
日朝首脳会談関連ですが、大きく分けまして三つのご意見がありました。一つが、小泉総理への批判に対してのご意見、それから二つ目が、逆に小泉総理が簡単に調印をしてガッカリしたというご意見。そして、三つ目は、日本人は歴史をもう一度思い出してほしいと、拉致のことばかり放送しないでくれという、この三つの意見がありました。
それ以外では『ザ・ワイド』では、"タマちゃん"について。それからプロ野球中継では、延長をやめてほしいという、こういったご意見がありました。
  • 平成14年度読売テレビ番組審議会委員
  • 委員長    熊谷信昭   兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
  • 副委員長    馬淵かの子   兵庫県水泳連盟   顧問   元オリンピック日本代表
  • 副委員長    川島康生   国立循環器病研究センター   名誉総長
  • 委員    秋山喜久   関西電力株式会社  顧問
  • 委員    金剛育子   能楽「金剛流」宗家夫人
  • 委員    林  千代   脚本家
  • 委員    阪口祐康   弁護士
  • 委員    佐古和枝   関西外国語大学教授
  • 委員    北前雅人   大阪ガス株式会社   代表取締役副社長執行役員
  • 委員    谷  高志   読売新聞大阪本社   専務取締役編集担当